最高裁判所第三小法廷 昭和41年(あ)1409号 決定 1966年11月22日
主文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中三〇日を本刑に算入する。
理由
被告人本人の上告趣意第二点および第六点のうち憲法一一条、三八条二項、三項違反をいう点は、記録による所論各供述調書が所論の如き拷問、強制等によって得られたと疑うべき証跡は存しないから、論旨は、その前提を欠き、同第四点のうち、憲法三八条三項違反をいう点は、その実質は単なる訴訟違反の主張であり、同第二点および同第四点のうち判例違反をいう点は、すべて事案を異にし本件に適切でなく、その余の所論は、事実誤認、単なる法令違反(記録に徴しても、所論各供述調書の任意性を疑うべき証跡は認められない)の主張であって、いずれも適法な上告理由に当らない。
弁護人荻原静夫の上告趣意第一は、判例違反をいうが、所論引用の判例は、すべて事案を異にし本件に適切でなく、その余は、単なる訴訟法違反の主張であり(犯罪の客観的要素が他の証拠によって認められる本件事案の下において、被告人の詐欺の故意の如き犯罪の主観的要素を、被告人の同種前科の内容によって認定した原判決に所論の違法は認められない)、同第二は、事実誤認の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。
また、記録を調べても、同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって、同四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 柏原語六 裁判官 下村三郎)